20代/ 女性
ヘルペスと思ったら梅毒だった ― 歩けないほどの陰部潰瘍で判明した20代女性の症例 ―Thought It Was Herpes? A Case of Severe Genital Ulcer from Secondary Syphilis in a Young Woman
診断
Before
閲覧注意
この写真には性器の描写が含まれております。
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After
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Before
エピソード
🔹患者さんの概要
20代女性。
1か月前から性器に2か所ほどの小さなできもの(ポチポチ)を自覚。
前医では「ヘルペスとは断定できないが、痛みや排尿時の刺激があればヘルペスの可能性が高い」と説明を受け、抗ウイルス薬を7日間服用しましたが、改善がみられませんでした。
むしろ痛みが強くなり、歩くのもつらいほどの陰部痛を訴えて当院を受診されました。
🔹診察所見
診察では、左大陰唇に明らかな腫脹を認め(画像1)、
小陰唇を翻転すると、直径3cmの硬結を伴う巨大な潰瘍が露出していました(Before)。
さらに、両側の鼠径リンパ節が著明に腫大しており(画像2,3)、
外観からは単純ヘルペス感染、あるいは梅毒性潰瘍が強く疑われました。
🔹検査と初期対応
初診時、以下の検査を実施しました:
単純ヘルペス特異抗原検査
梅毒血清反応(TP抗体、RPR定量)
同時に、疼痛緩和のため
アズノール軟膏(非ステロイド系抗炎症薬)とカロナール(解熱鎮痛薬)、
および膀胱炎予防目的の薬剤を処方しました。
結果、ヘルペス抗原は陰性であった一方、
TP抗体陽性・RPR高値(TP 90、RPR 89.6)を認め、梅毒の活動期と診断しました。
🔹治療経過
臀部へのステルイズ®(ペニシリン系抗菌薬)筋肉注射を実施。
翌日、一過性の高熱(39.6℃)を認めましたが、これはJarisch-Herxheimer反応(殺菌反応熱)によるものと判断されました。
治療開始から2週間後、性器の腫脹・潰瘍・排尿痛は著明に改善(画像5)。
再検査では、TP抗体106(軽度上昇)・RPR48(減少)を示し、血清学的改善傾向が確認されました。
🔹パートナーへの告知とカウンセリング
症状が落ち着いた段階で、患者さんから次の相談がありました。
「パートナーにはまだ伝えていません。会っていないので……言った方がいいですよね?」
医師からは以下のように説明しました。
「相手が無症状でも感染している場合があります。
梅毒は治療しないと神経や肝臓にまで病変(ゴム腫)が及ぶことがあります。
現在の状態では他者に感染させるリスクが高く、
ご自身が治療しても相手が未治療なら再感染する可能性もあります。
よって、必ずパートナーにも検査と治療を受けるようお伝えください。」
🔹最終経過
治療開始から6週間後の採血では、
TP抗体152(上昇)・RPR3.2(著明減少)と血清学的治癒傾向を示しました。
左小陰唇の潰瘍もほぼ閉鎖し、改善傾向がみられました(画像6)。
最終的に血清RPR陰性化(RPR 0)を確認するまでのフォローアップを説明しましたが、
その後、患者さんは通院を自己中断されました。
🔹医師からの解説
梅毒は近年、特に若い女性や男性で再び増加傾向にあります。
第1期(硬性下疳)では痛みを伴わない潰瘍として始まり、
第2期(バラ疹期)では全身症状やリンパ節腫脹を呈することがあります。
本症例のように、潰瘍が大きく痛みが強い場合はヘルペスと誤診されることも多いですが、
血清検査で確定診断を行うことが重要です。
また、治療後の一時的なRPR上昇は免疫反応によるものであり、改善過程の一部です。
確実な治癒を確認するためには、少なくとも3〜6か月間の定期的フォローが推奨されます。
患者さんからのお声
最初はヘルペスだと思って薬を飲んでいましたが、全く良くならず、不安で眠れない日が続きました。
診ていただいたところ、梅毒だと分かって本当に驚きました。
痛みで歩くのもつらかったのに、注射の治療を受けてから少しずつ回復し、今は普通に生活できています。
早めに受診して本当によかったと思います。
🔹まとめ
性器の潰瘍=ヘルペスとは限らない
梅毒は痛みを伴う潰瘍や鼠径リンパ節腫脹を起こすことがある
血液検査(TP抗体・RPR定量)が診断の決め手
治療後も再感染予防とRPR陰性化までの経過観察が重要
🩺銀座ヒカリクリニックでは
尖圭コンジローマ、梅毒、ヘルペスなどの性感染症の検査・診断・治療を専門的に行っています。
再発・誤診・パートナーへの感染リスクに不安を感じたら、早めの受診をおすすめします。



















