梅毒とは
梅毒トレポネーマ(ばいどく・とれぽねーま)という原因菌による性感染症です。コロンブスの新大陸発見より、またたくまに全世界へと拡がり、日本にも江戸時代に入ってきました。
恐れられた病気
ペニシリンが発見されるまで有効な治療法がなく、放置していると鼻はもげて、脳などの中枢神経への障害などが現れ、死に至るため、大変に恐れられていました。戦後に抗生物質が普及し、現在では早期の治療で治すことができます。
感染が近年、拡大傾向に
日本では一時期、ほとんど梅毒の発症がありませんでしたが、2010年頃より、患者数が増加し続けています。若い世代(20-40歳代男性、20歳代女性)の感染が多くなっているため、注意が必要です。
性器だけでなく、のど・直腸などへの感染も
梅毒は粘膜だけでなく、皮膚の小さな傷からも感染します。そのため、セックス、オーラルセックス、アナルセックスでも感染し、特にアナルセックスは直腸が傷付きやすいので感染しやすいとされています。また、唾液に病原体が含まれているとキスでうつることもあります。
他の性感染症リスク上昇
感染すると患部のただれた所は感染リスクが上がってしまうため、淋菌、クラミジア、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、HIVなどにかかりやすくなります。
梅毒の感染経路
原因となる梅毒トレポネーマは、侵入門戸(しんにゅうもんこ)である性器や肛門・直腸(ちょくちょう)から侵入すると、感染から6時間程度で血中に入り、梅毒は全身を駆け巡ります。感染から10日以降で、一次病変(いちじびょうへん)と呼ばれる潰瘍(かいよう)を作ります。潰瘍は口唇(こうしん、くちびる)、ペニス、女性器の外陰部(がいいんぶ)、直腸などに硬いしこりとただれの混在(初期硬結や硬性下疳といいます)するできものができます。患部のただれた部分の汁(浸出液)や精液、血液、膣分泌物、唾液などに梅毒は含まれ、セックス、オーラルセックス、アナルセックスによって、相手の皮膚や粘膜の小さな傷から入り込むと次の人への感染が成立します。
性器
最も多いのがペニスや女性の外陰部での感染です。初期硬結(しょきこうけつ)という「しこり」や、硬性下疳(こうせいげかん)という「ただれ」ができます。両側の鼠経リンパ節が腫れますが、痛くないのが典型です。この一次病変はみずみずしく、触れて粘膜につくと感染源となってしまうので、必ず触れないように、触れたら流水で洗い流すようにしましょう。
口唇
くちびるにも、一次病変はやってきます。フェラチオ・クンニリングスによって感染した梅毒によって硬性下疳が上下口唇にできます。くちびるの硬性下疳も性器同様、みずみずしく、ここが他人の粘膜に触れてしまうと、感染源となってしまいます。
一方、のどに粘膜斑ができる場合は、二次病変と言って区別されます。バタフライ・アピアランスと呼ばれるのどが白くただれてしまうのが有名です。
直腸
直腸粘膜は弱く、ちょっとしたことで傷付きやすいので、アナルセックスは梅毒の感染リスクが高いとされています。
母子感染
出産時にお母さんが梅毒に感染していると母子感染して赤ちゃんにうつってしまうことがあります。
梅毒検査は、一般的な妊婦健診の検査項目に入っていますので、妊娠初期に多くは発見されます。しかし、妊娠後期では検査しない事が多いため、妊娠の途中で感染してしまう場合には発見が遅れます。妊婦が梅毒に感染した場合には、治療方法が若干一般の方と異なるため、必ずかかりつけの先生の指示に従うようにしましょう。特に治療時期や、ヤーリッシュ・ヘルクスハイマーの際の対応が大切です。
運よく、出産までに母親の梅毒が完治しても、胎児は先天梅毒を免れない事も報告されていますので、妊活・妊娠初期・後期など心配な場合は梅毒検査をしましょう。
梅毒の症状
感染すると10-90日後に性器・口唇に一次病変や皮膚・のどに二次病変の症状が現れ、一定期間経過すると自然に症状が消えます。症状のない間に進行して、その後また別の症状が現れて消え、放置していると最終的には脳や心臓などにも拡がって死に至ります。
第一期梅毒
感染して、10-90日の潜伏期を経て、性器や口唇などを幹部として一次病変が出現する時の事を第一期と言います。患部には小豆から指先程度の大きさの「しこり」(初期硬結、しょきこうけつ)や「ただれ」(硬性下疳、こうせいげかん)ができます。軟骨のような感触で、痛みがともなうことは少ないとされています。また、太ももの付け根にあるリンパ節の腫れ(口唇に初期硬結がある場合は、のどのリンパ節の腫れ)が起こることもあります。2~3週間するとこうした症状は自然になくなります。
初期硬結
皮膚面はきれいですが、皮下に結節ができ、硬くなるので皮膚がひきつれます。
硬性下疳
硬いしこりの皮膚面がただれてしまい、潰瘍化してきます。
第二期梅毒
皮膚やのどなどの二次病変が出現する時のことを第二期と言います。第一期と第二期を合わせて早期梅毒(そうきばいどく)と言います。バラ疹やバタフライ・アピアランスが有名です。こちらもそのうち、自然に消えます。
丘疹性梅毒疹
赤みのある皮膚の隆起です。
梅毒性乾癬
赤茶の濡れた発疹で、白っぽいフケのようなものが付着しています。手のひらや足裏にできます。
バラ疹
ピンク色でバラの花びらに似た円形のあざのようなものが皮膚にできます。
扁平コンジローマ
肛門やペニスなどにできる、ピンクや薄いグレーのイボです。感染力が強い病変だとされています。
バタフライ・アピアランス
のどの腫れ、ただれです。
梅毒性脱毛
頭髪や眉が抜けることがあります。広範囲に抜けるケースもありますが、まだらに抜けることもあります。
第三期梅毒
感染から1年以上が経過した梅毒の事を後期梅毒(こうきばいどく)とよびます。症状が引っ込んでしまう梅毒を潜伏梅毒(せんぷくばいどく)と言います。その後、第三期梅毒まで行くと、中枢神経系、心臓大血管系、肝臓、骨などにゴム腫と呼ばれる結節が出現します。現在では第3期まで進行してしまうケースはほとんどありません。
梅毒の検査・診断・治療
検査
無症状の場合も検査によって感染の有無を確かめることができます。検査のタイミングは、感染機会から1ヶ月程度経過してから可能であり、3ヶ月後に検査して陰性の場合は感染していないと判断されます。
梅毒の治療について
陽性の場合、抗生物質による治療を行います。治療が必要となる梅毒の事を活動性梅毒と言います。血液検査を行い、TP抗体/RPR抗体の数値を見ながら治療を行い、平均して4-6週間で完治します。自然治癒はできませんので、検査が陽性の場合は必ず治療を受けましょう。後回しにしてしまうと症状が消えてしまって、潜伏梅毒となり、妊娠・出産時のトラブルや、知らないうちに病状が進行し、気づいたときには手遅れになる事もあります。
また、適切な治療をきちんと受けることで完治できますので、必要以上に恐れる事もありません。そして、パートナーにも必ず検査を受けてもらうようにしましょう。
治療内容
梅毒の治療には①従来のペニシリン系薬剤服用による治療、②ペニシリン系薬剤筋肉注射による治療の2つがあります。
①ペニシリン系の薬剤を内服投与(アモキシシリン®)します。治療期間は4~8週間程度です。感染時期がわからない場合、8~12週間の治療が必要になります。
②ペニシリン系薬剤を筋肉注射(ステルイズ®)します。早期梅毒の場合1回、後期梅毒(感染時期のわからない梅毒を含む)は3回の筋肉注射を行います。
完治したかどうかを確認するためには、定期的な血液検査(TP/RPR抗体)が必要です。医師の指示どおり、しっかり検査を受けてください。
治療の流れと注意するポイント
薬剤の投与によって、同日もしくは翌日に発熱・悪寒・頭痛といった症状が現れることがありますが、これは病原体が破壊されることで生じています(ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応)。
また、梅毒に感染しているのはHIV感染リスクが高い状態ですから、HIV感染検査も受ける必要があります。
梅毒の検査・治療費用
検査費 | 治療費 |
---|---|
スクリーニングとして TP定性 ¥880 治療中の評価として TP定量 ¥2,750 RPR定量 ¥5,500 |
飲み薬 |
表示価格は全て税込です。
治療に際して、上記の他に処方料¥220、解熱剤¥330、必要時に軟膏¥1,320がかかります。
即日検査は1項目当たり追加¥2,200で実施可能です。¥1,320
初診料 | ¥1,650 |
---|---|
再診料 | ¥1,100 |
処方料 | ¥220 |
梅毒の予防
梅毒の予防には性行為の時のコンドームの使用、性行為後72時間以内のDoxyPEP(ドキシペップ)、定期検査などがあります。くれぐれもどこかで防げるよう、万全の予防で臨みましょう。
ドキシペップの価格は以下の通りです。
*風俗で働かれる方は少しお安く提供できますので、医師にご相談ください。
回数 | 価格 |
---|---|
1回分 |
¥2,750 |
5回分 |
¥7,700 |
10回分 |
¥11,000 |
動画でわかる、梅毒
68【性感染症】梅毒についてわかりやすく解説してみた。
133【雑談】ほんの亀頭炎だと思っていたら梅毒だった話
【性病】”梅毒感染者”が過去最多のワケ|患者のリアルな声まとめ
最新の梅毒治療 ステルイズ筋肉注射の実際 【医学教育】 Vol.390
なぜ検査費用が安いのか!?
性感染症自由診療における検査1項目の費用にはばらつきがありますが、都内の性病専門医院では相場が8,800円程度とされています。
なぜ当院の検査1項目が3,300円からご提供しているか、「なぜそんなに安いんですか?」と聞かれることがございます。これはひとえに院長先生の方針からこのようなリーズナブルな検査費用が定まっているのです。
梅毒の急増を食い止めたい!
2010年頃から梅毒のりかん数(感染者数)は年々増加傾向です。2019年に一時減少しましたが、その後再び増加してきています。私たちが開業した2019年からずっと増加傾向です。
開業してから一貫して、スクリーニング検査を\880でやってきました。
元々男性同性愛者の方に多かった梅毒ですが、今や女性にも増え、最近では毎年のように学会で先天梅毒による流産、死産、生まれた後の障害、後遺症などの話題が尽きません。医師として、大変遺憾な事です。
梅毒の検査は他の血液検査より比較的安価に設定しているのはそのためです。
ステルイズ筋肉注射も安く設定!
本邦では、2022年よりステルイズ筋肉注射の提供が始まりました。早期梅毒に対して、これまで1,2ヶ月間毎日6錠のアモキシシリンの服用をしていましたが、それが1回の注射で賄えるとあって、とても人気の治療法です。
こちらも2022年当初は、\26,400で提供していましたが、2024年からは¥19,800で2万円を切りました。保険診療クリニックでは置いていない事も多く、患者さんは困ってしまいます。こちらも少しでもお安くして、梅毒の増加を食い止めたいと考えております。
後期梅毒の治療も安く設定!
1年以上前に感染した梅毒(後期梅毒といいます)や、発症時期不明の梅毒では、3週間に3度の注射が必要になります。
当院では、1回目\19,800、2,3回目はそれぞれ¥15,400に設定しています。少しでも安く、確実に完治させます。
完治するまで寄り添います
梅毒の診療では、保険診療では薬を出して、「半年後に採血に来てください」と、患者さんを放置してしまう先生がいらっしゃいます(これは何度も経験した実話です)。しかし、梅毒になったことのある方ならわかると思いますが、梅毒というのは治療は確立しているとはいえ、かかっている間は、患者さんにとってとても心理的ストレスがあります。当院では2週間おきの血液検査を行い(心配な方は1週間おきを希望される方もいます)、その方の梅毒の特徴を捉え、先手先手で次の事を予測して患者さんに説明していくスタイルをとっています。医者にとって何人も見ている梅毒でも、患者さんにとっては人生に1回あるかないかです。慎重にフォローし、分かり易く説明して差し上げる事で安心は得られると考えています。
ノリ先生からのメッセージ
私たちは本気で日本から、世界から梅毒の患者さんを減少させようとキャンペーンをし続けています。私たちが検査をできる場を提供しましたら、次は皆さんが検査を受けるか否かというところに問題はシフトします。私たちはHP、You Tube、インスタ、X等で検査を呼びかけています。お時間のある時で、急がなくて結構ですから、梅毒のお話に耳を傾けて、適切な検査を受けていただけましたら幸いです。セックスはリスクが伴います。特に今の時代には今の時代のリスクがあります。皆さんでお勉強して、スクリーニング検査で感染を防いでいきましょう。
症例写真と解説
*銀座ヒカリクリニックでは患者様ひとりひとりのご経験を貴重な症例としてとても大切にしています。Googleの口コミは、お名前が出てしまうのでご協力が難しい患者様には、“未来の患者様の為に”院内のアンケートにお答えいただいております。ここでは実際の患者様の症例と院長先生(ノリ先生)の解説、患者様のお声を匿名化してご紹介いたします。
- 20歳代 男性 前医で性器ヘルペスを疑われ、見逃された梅毒の一例
- 40歳代 女性 最初に‟薬疹”が疑われた二期梅毒の一例
- 20歳代 女性 陰部潰瘍、リンパ節腫脹で見つかったヘルペス、梅毒同時感染の一例
- 20歳代 女性 お風呂で目立つ赤い斑点を認めた二期梅毒の一例
- 40歳代 女性 あくびの違和感、飲み込みの痛さで見つかった梅毒の一例
- 30歳代 男性 風俗利用後、初期硬結、バラ疹を発症し、郵送検査で診断された梅毒の一例
- 20歳代 女性 半年間で淋菌クラミジア感染症、膣トリコモナス症、コンジローマ、梅毒を経験した一例
- 20歳 女性 性器ヘルペスが疑われ、陰部潰瘍が増悪し、一期梅毒であった一例
- 20歳代 女性 性器ヘルペスが疑われたが、陰部潰瘍の悪化から疑われた一期梅毒の一例
- 50歳代 男性 ヘルペス治療で良くならない潰瘍の正体は梅毒であった一例
- 30歳代 男性 一期梅毒加療中に薬疹を認めた一例
- 20歳代 男性 小さな尖圭コンジローマを併発した一期梅毒患者様の一例
- 50歳代 男性 風俗利用でうつされてしまった梅毒男性の一例
- 20歳代 女性 4つの性病に同時に感染してしまった20歳代女性の一例
- 10歳代 女性 5種類の性病にかかった、10歳代女性の一例
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記事監修
院長 剣木憲文(けんのき のりふみ)
医師、医学博士
日本性感染症学会認定医
銀座ヒカリクリニック院長
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