1.はじめに
性感染症(STI)は、世界中で広く見られる公衆衛生問題です。特に、若い世代や性的に活発な人々において、STIのリスクは高まります。最近、グリンス(主成分:イソプロピルメチルフェノール)を使用することで性感染症を予防できるのか、という質問をされることがあります。実際にはどうでしょうか? このコラムでは、風俗店の現場でよく用いられるというグリンスが性感染症の予防に効果があるのか、専門家の視点から解説します。
2.グリンスとは何か?
グリンスはイソプロピルメチルフェノールを主成分とするフェノール系消毒薬で、主に細菌や真菌に対して効果があります。口腔用洗口剤やハンドソープに含まれることがあり、雑菌の発生を抑える効果があります[2][4]。
性感染症の種類とリスク
性感染症には、淋菌、クラミジア、マイコプラズマ・ジェニタリウム、ヘルペスウイルス、HPV、HIV、梅毒、HCV、HBVなどが含まれます。これらの微生物は、性行為を通じて伝染し、深刻な健康被害を引き起こす可能性があります。
グリンスの効果
グリンスは、主に細菌や真菌に対して効果がありますが、ウイルスに対する効果は限られています。特に、性感染症を引き起こす多くのウイルスに対しては、ほとんど効果がないとされています[1][5]。
3.淋菌とクラミジア
- グリンスはこれらの細菌に対して部分的に効果があるかもしれませんが、完全な殺菌効果を期待することはできません。
4.マイコプラズマ・ジェニタリウム
- グリンスはマイコプラズマに対して効果的ではないと考えられます。
5.ヘルペスウイルスとHPV
- グリンスはこれらのウイルスに対してほとんど効果がありません。
6.HIV、梅毒、HCV、HBV
- グリンスはこれらのウイルスに対して効果がありません。
7.専用の消毒方法
性感染症の予防には、専用の消毒方法が必要です。以下の方法が推奨されます:
アルコールベースの消毒薬
- 60%から90%のエタノールやイソプロパノールを含む消毒薬は、多くのSTIを引き起こす微生物に対して効果的です。しかし、注意が必要です。アルコール消毒は陰部のデリケートな皮膚や粘膜には塗るべきではありません。もし塗ってしまうと、激痛になり、洗い流しても、その先1か月ほどは痛みが続きます。したがって、アルコール消毒はドア、椅子、机などの家具やおもちゃなどを消毒する際にのみ使用しましょう。
塩素水溶液
- 0.5%から1%の塩素水溶液は、多くの細菌やウイルスを殺菌するために使用されます。
ポビドン-ヨード製品
8.安全な性行為のための予防策
消毒だけに頼るのではなく、以下の予防策を併用することが重要です:
コンドームの使用
- コンドームは、多くのSTIを予防するための最も効果的な方法の一つです。
パートナーの選定
- 信頼できるパートナーと関係を持つことが重要です。パートナーの性歴やSTIの検査結果を知ることも役立ちます。
定期的な検査
- 定期的なSTI検査を受けることで、早期発見と治療が可能になります。
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ドキシペップ
- 性行為後73時間以内に抗生剤のドキシサイクリンを2錠内服すると、クラミジアや梅毒は90%近い予防効果、淋病は55%程度の予防効果を認めます。
9.結論
グリンスは、口腔内の衛生を維持するために有用ですが、性感染症の予防には不十分です。専用の消毒方法や安全な性行為のための予防策を併用することが非常に重要です。特に、物品に対してはアルコールベースの消毒薬、のどや性器に関してはポビドン-ヨード製品などの使用(使用後しっかりと洗い流す事が大切)を推奨します。また、コンドームの使用や定期的なSTI検査、ドキシペップも不可欠な予防策です。
最終的なメッセージ
性感染症の予防は、単一の方法に頼るのではなく、多面的アプローチが必要です。グリンスを含むあらゆる予防策を理解し、実践することで、健康的な性生活を送ることができます。もしもあなたがSTIに関する心配や疑問を持っている場合は、医療専門家に相談することをお勧めします。
性感染症の予防は私たちの全ての健康を守るための重要な一歩です。正しい情報に基づいた予防策を実践することで、安全で健康的な性生活を送ることができます。
出典:
[1]https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/01/s0117-9d45.html
[2]https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/symptom/47_inbunokayumi/index2.html
[3]https://www.jstage.jst.go.jp/article/kansenshogakuzasshi/92/5/92_670/_pdf
[4]https://career.whitecross.co.jp/dstyle/list/news/5026/
[5]https://www.fi-k.jp/blog/wp-content/uploads/2020/06/soudan_in_2005.pdf
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院長 剣木憲文(けんのき のりふみ)
医師、医学博士
日本性感染症学会認定医
銀座ヒカリクリニック院長-
メディア(取材)
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