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2024.11.12

【全て網羅!!】性病の種類を専門医が解説|東京・性病検査・安い|銀座ヒカリクリニック

 

1はじめに

このホームページでは、これまで多くの性病についての専門的なお話をしてきました。今回は性病初心者の方に優しい、導入部分のお話を分かり易く解説する事を心掛けました。ぜひご一読お願い致します。表現が稚拙に思われるかもしれませんが、中学生でもわかる内容を目指して発信しています!

2性病って何?

性病は、正式には「性感染症(せいかんせんしょう)」と言います。セックスやオーラルセックス、アナルセックスをすることで、性病のばい菌が人から人へと伝播します。それを「感染(かんせん)」と言います。「性的接触」「感染を起こす病気」の事を性感染症、STI:Sexually Transmitted Infectionと呼ぶのです。性感染症には様々な病気があります。それらの病気の総称として、性感染症と言います。

3感染症って何?

今お話ししたように、人から人へばい菌がうつる事(伝染する事)「感染」と言い、感染により引き起こされる病気「感染症」です。ばい菌が人に感染するとどのような体の変化が起こるでしょうか。

4炎症って何?

感染の次は炎症です。すなわち、ばい菌が人に感染すると、次は炎症を起こすのです。炎症と言うのは赤くなり、熱くなり、腫れて、痛みを伴う事が一般的です。今お話しした、「性的接触」「ばい菌」「感染」「炎症」のつながりは下に書いたようになります。そして、性感染症で困る事を考えてみましょう。

性感染症とは?

  • 性的接触 → 人から人へ、ばい菌がうつる → 感染が起こる → ばい菌がつくと炎症を起こす
  • 性的接触で感染し、菌による炎症を起こすと性感染症が成立します。

性感染症で困る事とは?

  • 問題① 性病症状があると悪化して、体がむしばまれる。
  • 問題② 性病症状がないと、病気の自覚がないので、他の人にうつしてしまう。社会に蔓延する。

5原因菌って何?

ここで、これまでお話してきた「ばい菌」についてのお話をしましょう。ばい菌はとても小さな生き物であり(多くは1mm以下)、マイクロメートルやナノメートルの世界です。顕微鏡の歴史と共に、寄生虫学、原虫学、真菌学、細菌学、ウイルス学と、この約100-150年の間に、いろいろなばい菌が解明されてきました。

性病の原因となるばい菌の事を「原因菌(げんいんきん)」と言います。原因菌は何かしらの悪い菌の事です。ヒトを困らせる菌の事です。上にお話ししました通り、体に様々な炎症症状(えんしょうしょうじょう)を起こしたり、症状はなくても他人にうつし、社会に蔓延させてしまい、社会の人々の多くが病気になり困ってしまいます。

以下に性病を引き起こす原因菌についてまとめました。

≪原因菌の種類≫
【菌の名称】
特徴

≪寄生虫≫

【疥癬】

【ケジラミ】

【疥癬(かいせん)】指と指の間に寄生虫が入り込む恐ろしい病気です。【ケジラミ】肉眼で確認できるほど大きく、大昔から知られている性病です。今は脱毛が流行ったことで患者さんは減少しています。

≪原虫≫

【トリコモナス】

【赤痢アメーバ】

【トリコモナス】性行為での粘膜感染の他、トイレや検診台、タオルなどからの接触感染も起こします。【赤痢アメーバ】糞口感染で大腸に潰瘍を作ったり、肝膿瘍を作ったりする。トリコモナスもアメーバも発展途上国に多い原虫による性病です。

≪真菌≫

【カンジダ】

【白癬(はくせん)】

【カンジダ】高温多湿を好みます。膣の常在菌だが、量が増えると痒みの原因となります。糖尿病の男性はカンジダ亀頭炎になりやすい事で有名です。【白癬(はくせん)】昔、「いんきんたむし」と呼ばれた菌です。性病だけでなく水虫の菌としても有名です。

≪細菌≫

【淋菌】

【クラミジア】

【マイコプラズマ】

【ウレアプラズマ】

【梅毒】

【一般細菌】

【淋菌】ペニスが痛み、膿が出るのが特徴ですが、驚くことに当院の統計では無症状保菌者も10%近く存在しています。大正時代には抗生物質がなかったためにある患者さんは40年間感染した状態のままであったり、尿道狭窄などの合併症を来たすこともありました。【クラミジア】世界で最も多い性病の原因菌です。無症状が多いです。無治療では不妊になる可能性があります。【マイコプラズマ・ウレアプラズマ】非クラミジア性非淋菌性尿道炎の代表として知られる菌です。肺炎のマイコとは別です。細胞壁を持たず、クラミジアの薬が効果的です。【梅毒】コロンブスの時代や日本では江戸時代などに流行った有名な性病です。最近では戦後に22万人、60年代、80年代に年間数千人、2010年代~現在にかけて年間約1万人弱の流行が知られています。

≪ウイルス≫

【HIV】

【HPV】

【HSV】

【B型、C型肝炎ウイルス】

【HIV】ヒト免疫不全ウイルスといいます。見つからないままである時エイズを発症する事を「いきなりエイズ」といい、防がなければならない重大な問題のひとつです。【HPV】ヒトパピローマウイルスといい、尖圭コンジローマや子宮頸がんを発症させます。HPVワクチンで予防ができます。【HSV】単純ヘルペスウイルスです。性器ヘルペスや口唇ヘルペスを引き起こします。1型より2型の方が再発しやすいです。【B型、C型肝炎ウイルス】肝臓に炎症を起こす病気を引き起こすウイルスです。

一方、困る事のない良い菌もたくさんいます。ちなみに良い菌は病気の原因とならないので「原因菌」とは呼ばず、「常在菌(じょうざいきん)」と言います。に存していても良いです。

6性病一覧

今からダーッとほとんどすべての性病について説明していきます。それぞれ特徴があってとても興味深いばい菌、病気ばかりです。全部を話してしまうといくら文字数があっても足りないので、ポイントだけお伝えしていきます。

性感染症一覧

  • 淋菌、クラミジア、咽頭淋菌、咽頭クラミジア、HIV、梅毒ヘルペス、カンジダ、HPV、マイコプラズマ・ウレアプラズマ、トリコモナス、一般細菌、A,B,C型肝炎、赤痢アメーバ症、ケジラミ

6-1淋病(淋菌感染症)

淋病は淋菌による性感染症です。

淋菌とは?

淋菌は、ナイセリア属のグラム陰性双球菌です。グラム染色にて、赤く染まるものをグラム陰性菌と言います。双球菌と言うのはブドウの房の様な丸い球菌が二つ(対)で存在しています。大きさは0.6µm〜1.0µmです。1879年(明治12年)、アルベルト・ナイサーにより発見されました。

男性は排尿痛や膿の排泄が特徴で女性は無症状または膣内の膿、膀胱炎、バルトリン腺炎などを引き起こすことがあります。下記の症例をご参照ください。

6-2クラミジア

世界で一番多くの患者さんがいるとされている性病です。感染力が強く、無症状の事が多いです。
細胞壁を持たないので細胞壁を攻撃する抗生物質が効果を示しません。菌のDNAやたんぱく質をターゲットとする抗生物質が効果的です。
2007年に国内で、女子高校生の13.1%、男子高校生では6.7%が感染しているとの報告があります。また、2013年10月から2014年3月までに全国の産科クリニックを受診した妊婦325,771例を対象とした検査によると、2.4%が無自覚にクラミジアを保菌していたという報告もあります。
19歳以下:15.3%、20 – 24歳:7.3%、25 – 29歳:2.2%、30 – 34歳:1.2%、35 – 39歳:0.8%、40歳以上:0.9%

6-3咽頭淋病(咽頭淋菌感染症)

咽頭クラミジアを抑え、この淋菌による感染がのどの性病では一番多いです。キスやオーラルセックスでうつります。風邪のように咽の違和感、イガイガ感がある事もあるし、無症状の人も多いです。男性もかかります。生理食塩水のうがいで検査ができます。治療は飲み薬は効かないとされており、点滴が必要です。

6-4咽頭クラミジア

喉の症状は軽微な事が多いですが、治らない風邪の咽頭症状などがある場合に見つかったりします。キスやオーラルセックスでうつります。子宮頚管部からクラミジアが検出される場合、無症状であっても10-20%は咽頭からもクラミジアが検出されます。慢性扁桃腺炎や咽頭炎のうち、セフェム系抗生剤で治療し、反応しないもののうち、1/3にクラミジアが検出されます。男性もかかります。性器に感染した者に比べ、治療に時間がかかると報告されています。

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6-5HIVAIDS

男性同性愛者に多い性病です。完治はしませんが、抗ウイルス薬の登場により、早期にHIV感染の確認ができれば、エイズ発症の時間を遅らせる事ができるようになってきています。

実際のHIV症例はこちら

6-6梅毒

梅毒とは?

梅毒トレポネーマという、らせん状の形が特徴的な性病の原因菌です。他の性病と異なり、感染してから病期によって症状や感染力が変化するのが特徴です。
病期は一期、二期、三期と分けられ、一期梅毒では感染箇所(侵入門戸と言います)の潰瘍や所属リンパ節腫脹と言った一次病変が見られ、二期梅毒ではバラ疹と呼ばれる淡い赤色の皮疹が全身に診られます。三期梅毒では中枢神経系、循環器系、多臓器などへゴム腫と呼ばれる腫瘍が形成されたり、鼻や口蓋がもげてしまうなどとても怖い状態となってしまいます。

梅毒は治る?

梅毒は元々はコロンブスが新大陸からヨーロッパへ、その後世界に蔓延し、日本でも江戸時代から不治の病として遊郭を中心に流行していました。
戦後にペニシリンが普及し、治る病気となり、一時流行は治まりました。60年代、80年代、そして2010年代にも流行が見られており今現在もそれは治まっていません。
2022年に梅毒注射製剤であるステルイズ®が発売されました。当院でもこれまでに250名を超える(2024年11月現在)患者様がご来院され、診断・治療に貢献してまいりました。

当院では三期梅毒の方が来られたことはありません。三期梅毒は表層の病気ではないため、総合病院や大学病院への受診が予想されます。心配な方は必ず病院を受診しましょう。

6-7性器ヘルペス

単純ヘルペスウイルス1型、2型による性感染症です。不安な性行為から2-9日後に、性器や口唇に多発潰瘍を来たします。発熱する事もあります。初めて感染した時(初感染時)は性行為で相手からうつりますが、2回目以降の「再発」は性行為は関係なく、自分の体調の悪い時に、発症します。最初に感染した時にヘルペスのウイルスは腰仙髄神経節に潜伏するためです。今の治療薬では体内のウイルス量を減少させることはできますが、体内から排除する事はできません。

女性の性器ヘルペスによる陰部潰瘍はとても痛々しいですが、これは本人は見えていない事がとても多いです。何となく、痛痒かったりして鏡で見る人もいれば、触っておかしいと分かる人、クリニックで私たちが見るまで陰部潰瘍に気づかない人もいます。

6-8カンジダ

カンジダ菌とは

カンジダ菌とは、真菌(カビ)の仲間で酵母菌ですが、条件によっては菌糸のように細長い構造に見える事があります。その構造は仮性菌糸、厚膜胞子、分芽胞子からなり、胞子を出芽する事で増殖していきます。性病として有名なのは、カンジダ・アルビカンスとカンジダ・グラブラタです。

元々常在菌?

カンジダは女性の膣内の常在菌とされています。普段、調子のよい時は膣の自浄作用が働き、悪さする事はありません。しかし、ひとたび体調を崩し、膣の自浄作用が損なわれると、量が増えてかゆみやおりもの増加、おりものの性状が固形のチーズ状に変化します。これらの症状は女性にとってとても不快な症状です。また、男性もカンジダによる亀頭炎や尿道炎を来たす事があります。特に糖尿病を持っている方や糖尿病のお薬を飲んでいる方はなりやすい傾向にあるため、注意が必要です。

6-9尖圭コンジローマ・HPV(低リスク群)

HPVはヒトパピローマウイルスの略で、約200種類の型があると言われています。低リスク群は性病の尖圭コンジローマを引き起こす事で有名です。高リスク群は子宮頸がんの検査です。子宮頸がんは性行為で感染したウイルスが元となってがんが発症します。

6-10マイコプラズマ・ウレアプラズマ

2012年から検査ができるようになってきた、比較的新しい性病の原因菌です。クラミジアに構造が似ているため、クラミジアに効果的なお薬が効きます。マイコプラズマ・ジェニタリウムは特に耐性菌が多く、2-4,5種類の抗生剤でやっと完治します。なお、肺炎のマイコプラズマとは異なります。

ます。特に糖尿病を持っている方や糖尿病のお薬を飲んでいる方はなりやすい傾向にあるため、注意が必要です。

実際のマイコプラズマ・ウレアプラズマ症例はこちら

6-11トリコモナス

男性では尿道炎を、女性では膣トリコモナス症を引き起こします。原虫と呼ばれる性病の原因菌で人から人の粘膜感染ばかりでなく、タオルやトイレからの接触感染も知られています。発展途上国ではとても多い性病の原因菌です。

6-12一般細菌

一般細菌とは、特定の細菌を指しているのではなく、病原体となりうる細菌群の総称です。その意味で「非特異的(特定の細菌ではない)」という言い方がなされます。男性では、非特異的尿道炎や非特異的亀頭炎、女性では細菌性膣症を発症します。

6-13 A型肝炎・B型肝炎・C型肝炎

A型肝炎

A型肝炎ウイルスによる急性肝炎です。慢性化することなく自然回復します。ウイルスは肝細胞で増殖しますが、それ自体には細胞傷害性はなく、細胞障害性Tリンパ球やNK細胞による免疫応答にて細胞傷害が発生すると考えられています。
糞便-経口感染をするので、パートナー間以外にも家族間でも感染が伝播することがあります。肝臓で増殖したウイルスは胆道を介して糞便中に排泄されます。日本での発生件数は年間100-300例です。血液検査IgM-HA抗体の上昇により診断でき、治療はブドウ糖点滴やステロイドなどを投与します。予後は良好です。

B型肝炎

B型肝炎ウイルスの感染により引き起こされます。乳幼児の感染では持続感染(キャリア化)しますが、成人では一過性感染に終わることが多いです。ウイルス量の多い状態の場合、B型肝炎ウイルスは血液だけでなく、精液・頚管粘液などにも含まれるため性行為で感染が伝播します。1971年に初めてB型肝炎の性行為による伝播が報告されました。急性感染を起こした場合、急性肝炎を発症するのは約1/3と言われており、そのうち1-2%で劇症肝炎に発展します。その場合は重篤で肝移植ができない場合の死亡率は70%です。
スクリーニング検査はHbs抗原であり、陽性の場合は肝胆膵内科へのご紹介となります。追加検査(IgM型HBcや遺伝子検査など)が行われ、治療必要性の有無などが吟味されます。

C型肝炎

C型肝炎ウイルスによる感染で、主には血液感染です。B型肝炎に比べて、精液や頚管粘液に感染性ウイルスを含む例は少ないと考えられています。夫婦間では年齢とともに感染率が高くなるとされています。(夫婦間での年間感染率:0.23%)一方で、性風俗業の従事者のC型肝炎抗体陽性の頻度は同年代の一般女性に比して8-10倍であったという報告があります。したがって、風俗で働く方は注意が必要です。
スクリーニング検査はHCV抗体ですが、陽性の場合必ずしもい活動性炎症であるというわけではないので、続いて肝胆膵内科をご紹介し、HCV-RNAなどによる精密検査が必要になります。

6-14赤痢アメーバ症

赤痢アメーバという原虫による感染症で、主に発展途上国に多いとされています。日本では同性愛者間に性感染症として流行することがあり、1980年代頃から漸増しています。日本では衛生環境が整備されているので、発展途上国からの帰国者や知的障碍者施設等での流行が報告されています。
感染経路は糞口感染で、赤痢アメーバの嚢子(シスト)による汚染飲食物を経口摂取する事で成立します。口から侵入したシストは胃・小腸へと達し、脱シストして栄養型となり分裂を繰り返して大腸に到達します。大腸粘膜に潰瘍性病変を形成してアメーバ性大腸炎を発症させます。また腸管外では肝膿瘍を作ることが知られています。
検査は便の検査です。治療はフラジールの服用です。

6-15ケジラミ症

ケジラミ症は、ヒトの毛に寄生する吸血昆虫であるケジラミによる感染症です。感染は性行為により伝播し、主に陰毛に寄生して、卵を産み付け、皮膚の中に頭を突っ込んで血を吸います。カニばさみのような手で陰毛にしがみついて生息します。
診断は肉眼で虫卵と虫体を確認できます。下着にケジラミの排泄する血糞による黒色点状のシミがつくのも診断の一助となります。頭髪に寄生した場合にはアタマジラミとの鑑別が必要になります。治療は剃毛、フェノトリン(スミスリン®)パウダーまたはシャンプーです。

7性病にかかりやすい人、かかるタイミング、診療科、症状、感染経路、潜伏期間、検査、治療、完治するか、予防等について

7-1性病にかかりやすい人

性病にはかかりやすい人とかかりにくい人とがいます。具体的に性病にかかりやすい人を以下にまとめてみました。

性病にかかりやすい人

  • 不特定多数の人と性行為をする人
  • コンドームを使用しない人
  • 糖尿病の人、または糖尿病の薬を使用している人
  • 自己免疫疾患(例えばアトピー性皮膚炎、潰瘍性大腸炎、膠原病など)を有し、免疫抑制剤を使用している人
  • 仕事で性行為をする人、風俗嬢、女性用風俗キャスト、AV男優・AV女優
  • 風俗を利用する人
  • パパ活、立ちんぼをする人、利用する人
  • 覚せい剤を利用して性行為をする人
  • 無理やり(不同意に)性行為に及ばれた人

上記の具体例は実際にこれまで当院に来られた患者様です。

7-2性病にかかるタイミング

性病にかかりやすい具体的なタイミングを以下にまとめます。

性病にかかりやすいタイミング

  • 付き合いたてのカップル
  • 付き合って3,4か月のカップル
  • 新しい相手と性行為をした時
  • コンドームを使用しなくなった時
  • 膣内射精を始めた時
  • 風俗を利用した時/女性用風俗を利用した時
  • 特定の相手だけだが、妊活で沢山性行為をしている時
  • 妻が妊娠し、夫が寂しくなった時
  • パパ活を利用した時
  • マッチングアプリを利用した時
  • SNSで出会い、性行為をした時

“上記の思い当たるタイミングがある方は無症状でも性病検査を受ける事がとても大切です。”

7-3性病は何科を受診すればよいのか。

まず、何科で性感染症は主に診療されているのでしょうか。性感染症の分野は様々な診療科がオーバーラップした分野であり、年に1度の性感染症学会でも様々なバックグラウンドをお持ちの先生がお集まりになられます。でも、患者さんにとって自分の病気をどこで診てもらうべきなのか分かりにくいのは良くありません。共に考えてみましょう。ここでは皆さんが考えやすいように、患者さんの目的を明確にして表にまとめてみました。

対象と目標 診療科
男女、性感染症全般を見てもらいたい! 性感染症内科(性病科)
男性、女性の目が気になる! 泌尿器科、メンズクリニック
女性、男性の目が気になる! 婦人科、レディースクリニック
皮膚症状のある性病を診てほしい! 皮膚科
咽頭症状のある性病を診てほしい! 耳鼻咽喉科
今すぐ見てほしい! 総合内科、救急診療科
HIVが心配! 血液内科、臨床検査科、感染症科
感染症全般を診てほしい! 感染症科
肝炎ウイルスについて相談したい! 肝胆膵内科、消化器内科
妊婦の性病を診てもらいたい! 産婦人科
目の性病を診てほしい! 眼科

*診療科だけで性感染症を見ているか否かは判断できません。受診の前には必ずHPを見て、わからない事は問い合わせてみましょう。

7-4性病の症状一覧

性病の症状を以下にまとめました。

性病の症状一覧

  • 【男性】尿道の違和感、ムズムズ感、痛み(実は女性もあり得る)
  • 【男性】尿道から透明~白、黄色い膿が出てくる(実は女性もあり得る)
  • 【女性】外陰部の痒み、おりもの増加、悪臭、不正出血(生理の時期とは関係のない出血)、下腹部痛
  • 【男女】のどの違和感、イガイガ、痛み
  • 【男性】亀頭や包皮に赤み、カス、腫れがある
  • 【男女】性器や肛門周囲にできものができた
  • 【男女】発熱し、性器がただれ、
  • 【男女】体全体に発疹ができた
  • 【男女】唇に硬いしこりができた、口内炎ができた
  • 【男女】全身倦怠感、黄疸

“このような症状のある方は性病が疑われますので性病検査を受けましょう”

このような症状があると、実際にどの性病が疑われるのでしょうか?? まとめてみましょう。

性病の症状一覧と予想される性病の関係

  • 【男性】尿道の違和感、ムズムズ感、痛み(実は女性もあり得る) → 【予想される性病】淋病、クラミジア、マイコプラズマ・ジェニタリウム、ウレアプラズマ・ウレアリチカム、トリコモナス、カンジダ、アデノウイルス、インフルエンザ菌、髄膜炎菌などによる尿道炎、女性であれば膀胱炎
  • 【男性】尿道から透明~白、黄色い膿が出てくる(実は女性もあり得る) → 【予想される性病】淋病、クラミジア、マイコプラズマ・ジェニタリウム、トリコモナス尿道炎など
  • 【女性】外陰部の痒み、おりもの増加、悪臭、不正出血(生理の時期とは関係のない出血)、下腹部痛 → 【予想される性病】淋菌、クラミジア、マイコプラズマ・ウレアプラズマ、カンジダ、トリコモナス、細菌性膣症など
  • 【男女】のどの違和感、イガイガ、痛み → 【予想される性病】淋菌、クラミジア、マイコプラズマ・ウレアプラズマ、梅毒など
  • 【男性】亀頭や包皮に赤み、カス、腫れがある → 【予想される性病】カンジダ性亀頭包皮炎、一般細菌による非特異的亀頭包皮炎、菌が検出されない場合は接触性皮膚炎による亀頭包皮炎
  • 【男女】性器や肛門周囲にできものができた → 【予想される性病】尖圭コンジローマ、性器ヘルペス、伝染性軟属腫(水いぼ)、梅毒
  • 【男女】発熱し、性器がただれ → 【予想される性病】性器ヘルペス
  • 【男女】体全体に発疹ができた → 【予想される性病】梅毒、HIV感染症
  • 【男女】唇に硬いしこりができた、口内炎ができた → 【予想される性病】梅毒、HIV感染症
  • 【男女】全身倦怠感、黄疸 → 【予想される性病】B,C型肝炎
  • 【男女】やたらと毛の生えている所がかゆい → 【予想される性病】ケジラミ、カンジダ症

上記のまとめを見ると、性病の全体像が俯瞰してみる事ができますね。これである程度の自己診断もできるかもしれません。でも右側を見る分かる通り、性病を症状だけから一つに絞る事は医師でも困難です。また、全ての性病のリスクファクターは「性行為」「不特定多数の相手」「コンドームを使用しない事」等で共通であり、混合感染の可能性も考えると、病気を絞る意味はあまりないのではないでしょうか、とさえ思えてきます。広めの検査を行い、陽性が出て診断の着いたものから治していくのが理にかなっています。

7-5性病の感染経路一覧

性病の感染経路には以下があります。まとめてみました。

性病の感染経路一覧

  • 粘膜感染
  • 相手の皮膚(股間)/浸出液との接触感染
  • 唾液感染
  • 血液/精液感染
  • 糞口感染
  • 自己感染(性感染症関連疾患)
  • タオル、検診台、トイレなどでの接触感染

他、上気道炎や肺炎などの呼吸器感染症のような飛沫、飛沫核感染(空気感染)などは性病では起こしません。

これらの感染経路から予想される性病はどんなものがあるでしょうか。これもまとめてみます。

性病の感染経路と性病の一覧

  • 粘膜感染 → 【性病】淋菌、クラミジア、マイコプラズマ、ウレアプラズマ、トリコモナス、(カンジダ、一般細菌)
  • 相手の皮膚(股間)/浸出液との接触感染 → 【性病】性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、伝染性軟属腫(水いぼ)、ケジラミ
  • 唾液感染 → 【性病】淋菌、クラミジア、マイコプラズマ、ウレアプラズマ
  • 血液/精液感染 → 【性病】梅毒、HIV、B/C型肝炎
  • 糞口感染 → 【性病】赤痢アメーバ、A型肝炎
  • 自己感染(性感染症関連疾患) → 【性病】カンジダ、細菌性膣症
  • タオル、検診台、トイレなどでの接触感染 → 【性病】トリコモナス、赤痢アメーバ

“思い当たる感染経路で気になる場合は性病検査をしましょう”

7-6各性病の潜伏期間

潜伏期間とは不安な性行為(感染機会と言います)からどのくらい時間が経過して、症状が出るかについての期間の事です。

性病の潜伏期間一覧

  • 2-7日間 → 【可能性のある性病】淋菌、性器ヘルペス
  • 1-3週間 → 【可能性のある性病】クラミジア、マイコプラズマ・ウレアプラズマ
  • 3週間から8か月 → 【可能性のある性病】尖圭コンジローマ
  • 10日-90日 → 【可能性のある性病】梅毒

潜伏期間はあくまで目安です。必ずしも合致せず、個人差があったり、そもそも無症状の場合には検査で陽性となった時に、いつ感染したかは不明です。でも、もし今あなたが明確な症状がある場合、さかのぼってどの行為が心配だったのか、どの性病が考えられるのかなど考える事で診断に結び付く事も多くあります。私たち性病の医師は患者様のお話、エピソードにとても慎重に耳を傾けているのです。

7-7検査ができるまでの期間

先程は感染機会から症状が出るまでの期間である潜伏期間について学びました。少し似ていますが、今度は感染してから検査ができるまでの期間(ウインドウ期といいます)についてまとめてみましょう。

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7-8性病の検査一覧

性病の検査にはどのようなものがあるでしょうか。その検査によりわかる性病とともに、以下にまとめてみました。

性病の検査とその検査によりわかる性病の一覧

  • 尿検査(男性尿道炎、女性膀胱炎の場合) → 【これで分かる性病】淋菌、クラミジア、マイコプラズマ・ウレアプラズマ、トリコモナス、カンジダ、一般細菌
  • おりもの検査 → 【これで分かる性病】淋菌、クラミジア、マイコプラズマ・ウレアプラズマ、トリコモナス、カンジダ、細菌性膣症
  • ペニスの皮膚ぬぐい検査 →【これで分かる性病】カンジダ性亀頭包皮炎、非特異的亀頭包皮炎、接触性皮膚炎による亀頭包皮炎
  • うがい検査 →  【これで分かる性病】淋菌、クラミジア、マイコプラズマ・ウレアプラズマ
  • 潰瘍の皮膚ぬぐい → 【これで分かる性病】性器ヘルペス
  • 結節の皮膚ぬぐい → 【これで分かる性病】尖圭コンジローマ
  • 血液検査 → 【これで分かる性病】梅毒、HIV、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、性器ヘルペス
  • 便検査 → 【これで分かる性病】赤痢アメーバ

“ご希望の検査が見つかった方、銀座ヒカリクリニックでお待ちしております”

7-9性病の治療法について

性病の治療にはどのような治療があるのでしょうか。基本的には性病はこれまでお伝えした通り、ばい菌の感染による病気なので、ばい菌を死滅させる薬(抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬)が主役となります。こちらも治療法と性病の関係について、以下にまとめていきます。

「性病の治療法」と「性病」の一覧

  • 抗生物質の点滴 → 【性病】淋病、特に咽頭淋病
  • 抗生物質の飲み薬 → 【性病】淋病、クラミジア、マイコプラズマ、ウレアプラズマ、梅毒
  • 抗真菌薬の飲み薬 → 【性病】カンジダ症
  • 膣洗浄、抗生物質の膣錠 → 【性病】細菌性膣症
  • 膣洗浄、抗真菌薬の膣錠、抗真菌薬の軟膏 → 【性病】外陰部膣カンジダ症、白癬症
  • 抗生物質、抗真菌薬、抗炎症薬の軟膏 → 【性病】外陰部炎、亀頭包皮炎
  • 抗原虫薬の飲み薬 → 【性病】トリコモナス
  • 抗生物質の筋肉注射 → 【性病】梅毒、性器の淋病
  • 抗ウイルス薬の飲み薬 → 【性病】性器ヘルペス(初発、再発、再発抑制療法)、HIV、B/C型肝炎
  • 液体窒素治療、免疫賦活化クリーム、漢方 → 【性病】尖圭コンジローマ

“上記の治療法をご希望される場合は銀座ヒカリクリニックでお待ちしております”

3-10各性病が完治するか否かについて

完治する性病、しない性病で分けてみましょう。

完治する性病 完治しない性病

淋菌、クラミジア、梅毒、トリコモナス、カンジダ、亀頭包皮炎、細菌性膣症、B/C型肝炎

HIV、性器ヘルペス

上記に入れていないマイコプラズマ・ジェニタリウム、尖圭コンジローマ、のどの淋病は完治はしますが、稀に治療が難航する事があります

また、糖尿病のコントローㇽの悪い方は、亀頭包皮炎が長引いたりします。

7-11性病の予防の仕方

性病の予防には以下が想定されます。

性病の予防法の一覧

  • コンドームを使用する。
  • HPVワクチンを接種する。
  • 淋菌ワクチンを接種する。(当院では取り扱いなし)
  • HIVに対するPEP,PrEP(当院では取り扱いなし)
  • 細菌性の性感染症に対するDoxy PEP

性病の予防はどれも完ぺきではないため、100%安心とは言えません。必ず定期的な検査を併用しましょう。

まとめ

以上が性病の全体像になります。性病がどのようにして起こるのか、原因菌があり、プライベート空間で人から人へと感染して菌の検査をして診断がついたら、菌に対する薬を投与して、最後に治ったかどうかを確認する。とても単純な診療ですが、様々な症状や検査結果の解釈、治療にも様々なケースがあります。決して自己診断せず、まずは当院の専門医にご相談ください。あなたに最適で最良の医療をスムーズにご提供致します。

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【参考文献】
NIID 国立感染症研究所 https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/465-syphilis-info.html
現役産婦人科医による医師国家試験解説ブログ https://ameblo.jp/e-kunihiro/image-12420979983-14308160169.html
ウィキペディア https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B7%8B%E8%8F%8C
Mechanisms of Pathogenicity https://mechpath.com/2015/12/02/neisseria-gonorrhoeae/
 今井博久、高校生のクラミジア感染症の蔓延状況と予防対策 日化療会誌 55 (2): 135-142, 2007

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記事監修

院長 剣木憲文(けんのき のりふみ)

医師、医学博士
日本性感染症学会認定医
銀座ヒカリクリニック院長

メディア(取材)
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